第17回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第17回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

17回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」を開催いたしました。2017823日(水)17001830、参議院議員会館101会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第17回勉強会を開催いたしました。詳細は、月刊誌『集中』201710月号にて、事後報告記事を掲載致します。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させて頂きました。

「リスクマネジメントは2000年代に日本の企業に浸透した経営手法ですが、有事の時にいかに損害を少なくするかということを目的として、この取り組みが始まっています。震災後、リスクマネジメントの最重要課題は震災に対する危機管理となっています。熊本地震の時の企業がとったリスクマネジメントが話題になりました。ソニーは地震保険で200億円の保険料を受け取っています。JR東日本は、東北の大震災のとき、膨大な額の損害保険に入っていたにも関わらず、対象外ということで、保険料を受け取ることが出来ませんでした。リスクマネジメントの差が出たと言っていいでしょう。医療においても、リスクマネジメントが非常に重要になっています。そこで、今日は2人の専門家のお話を伺うことにしました」

続いて、当会国会議員団代表の原田義昭・衆議院議員にご挨拶頂きました。

「私の選挙区である福岡県朝倉市で、7月に大変な大雨が降りました。1時間に130㎜、場所によっては5時間で722㎜降りました。記録的な大雨により、大きな災害が起きました。こうした事は、予期していない時に起きるわけです。今日はリスクに対して保険はどうなっているのか、ということを勉強させて頂きます。皆さんのリスクヘッジに役立てて頂ければ、と考えています」

今回の講演は、東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員(経済産業省より出向)の植木貴之氏による『企業のリスクマネジメント・リスクファイナンスについて』と、Vergil Asset Management株式会社会長の長尾義久氏による『今注目される病院経営のリスクマネジメント新手法「キャプティブ(再保険)」解説』と題するものでした。以下はその要約です。


『企業のリスクマネジメント・リスクファイナンスについて』

企業におけるリスクマネジメントの意義

近年、企業の活動はグローバル化が進んでいますし、AIIoTなど情報技術の発達もあります。また、国際情勢の変化が激しく、日々いろいろなニュースが飛び交っています。さらに顕著な自然災害の発生などもあります。企業が直面するリスクは増大し、それぞれのリスクが相互に影響し合い、複雑化しているという現状があります。こうした中で、企業がリスクをどう把握・評価し、対応していくか、ということを考えていかなければなりません。これがリスクマネジメントの第一歩です。

安倍政権になってからは、企業におけるコンプライアンスやガバナンスの強化、企業の収益力や資本効率の向上、企業の社会貢献なども求められています。また、11人の従業員の働き方や健康をどうするのか、といった議論も盛り上がっています。企業に求められる役割や期待が増大しているのです。

そういう環境下で、企業が適切に収益をあげ、経済や社会に役割を果たし続けるためには、さまざまなリスクを適切に把握し、その企業や事業への影響をマネジメントすることが求められています。企業として収益をあげることは当然ですが、経済や社会に対して役割を果たし続けるためには、さまざまなリスクに対して、あらかじめ備えておくことが大事だろうということです。

リスクマネジメントの基本的な考え方

 リスクという言葉からは、事故や災害(ハザードリスク)、製品事故や不祥事(オペレーショナルリスク)など、ネガティブなものを連想しがちです。しかし、その本来の意味は、プラスマイナス両方向への期待からの逸脱や不確実性です。リターンを得るためにリスクを取るといった意味でのリスクも、きちんと踏まえておく必要があります。

 収益企業では、プラス方向のリターンをきちんと取っていかなければなりません。ネガティブなショックに対する危機管理に止まらず、企業が許容するリスクの範囲を明らかにし、取るべきリスクは取り、避けるべきリスクは避ける、ということを考えていく必要があります。そういう視点に立つと、理想的なリスクマネジメントとは、企業の経営戦略と一体のものであるといえます。

 こうした守りのリスクマネジメントから、攻めのリスクマネジメントへの展開の必要性が指摘されています。その一方、近年、甚大な自然災害が頻発し、サイバーセキュリティリスクの高まり、海外M&Aの増加、地政学リスクの増大などを背景に、多くの企業においては、守りの意識が強くなり、マイナス事象にどう対応するのか、というところに止まっているのが実情です。

リスクファイナンスの基本的な考え方

 リスクファイナンスとは、広い意味では、全社的なリスクマネジメントを実施する上での、財務面や資金調達面での対応全般ということになります。その手法としては、保険やコミットメントライン等の契約をあらかじめ結んでおくことに限りません。比較的小さいリスクやよく起こる事象に対しては、自己資金で対応できるようにしておくことも含まれます。それもリスクファイナンスだということです。

 リスクファイナンスを全社的に案が得る上で、その前提となるリスクマネジメントがまだできていないというのが、多くの日本企業の実態です。制度上の課題や、金融側のソリューション提案の不十分さといった問題があるとされています。

 また、適切なリスクファイナンスを実施するためには、リスクを定量的に把握し、適切な規模のファイナンス手法を検討することが求められます。これはきわめて専門的な作業であり、こういったレベルできちんとリスクファイナンスを行っている企業は、未だ一部に止まっています。

 企業の稼ぐ力、資本効率の向上といった観点からも、リスクを前提とした資本政策、リスクファイナンスの必要性は高まっています。そういったことを最も求められている総合商社や、それ自体が本業である保険会社といった業態を中心に、取り組みが進んできています。

医療経営におけるリスクマネジメント・リスクファイナンス

 医療機関におけるリスクマネジメントは、収益企業のリスクマネジメントと同じではありません。医療機関は非営利法人であることに加え、地域医療供給体制の維持など、公的な役割を踏まえる必要があり、民間企業におけるリスクマネジメントとは異なる点があると思われます。たとえば自然災害が起きたような場合、収益企業はポイントを絞って復旧を図ることもできますし、落ち着くまで企業活動を停止することもできます。しかし、医療機関では、地域の災害対策に基づく災害医療体制の構築など、収益企業とは異なる対策を考えていく必要があります。

 他方、今後は医療機関の経営においても、さまざまなリスクを適切に把握し、取るべきリスク、避けるべきリスクを峻別した上で、財務面を含めた対応を検討し、医療機関の経営者がどのようなリスクを取って、医療経営を考えていく必要があります。現在、直面しているのは、少子高齢化、地域によっては人口減少、それから医療技術の革新などの変化もリスクです。また、最近は医療従事者の働き方改革などもリスクであるといえます。

 また、海外展開を図る医療機関や、国際競争にさらされている製薬企業や医療機器関連企業では、先進的なリスクマネジメントとリスクファイナンスを考えて行くことが求められています。

『今注目される病院経営のリスクマネジメント新手法「キャプティブ(再保険)」解説』

 キャプティブ(再保険)は複雑な保険数理を駆使するため、非常に難解です。そこで、今回は単純化してわかりやすく説明し、大きなリスクに対して、こうすれば経済的に備えていけるのだということを、お伝えしたいと考えています。

 2014年に大手教育出版社で個人情報の流出があり、話題になりました。その企業は現在でも裁判を引きずっています。個人情報漏洩に関して、過去の判例に基づいて支払いをすると、非常に高額な金額が必要になるとされています。日本の保険会社には、こうした高額な個人情報漏洩保険は提供出来ません。しかし、再保険を使うことで、100億円、200億円、500億円といった保障にも耐えられるようなストラクチャーを構築することが出来ます。

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