日本の医療と医薬品等の未来を考える会

第18回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

第18回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

■これから求められるAI技術に対する9DWの考え

 今後、医療だけでなく、あらゆる分野で、AIシステムが既存のシステムを改革していきます。それによって、人間は人間がやるべき仕事に従事することになります。医師の仕事であれば、初期問診や事務的な書類を書く仕事などは、AIが自動的に処理していくことになり、医師は人間らしい仕事をする時間を確保していくことになります。そういったことを実現させるのが、汎用性AIであると我々は考えています。

質疑応答では次のような発言がありました。

尾尻:「海外のAIは日本語ができないのですか」

井元:「日本語の精度は非常に低いはずです。医療では「Watson」が診断という領域に手を付けていますが、それが日本に広がってきていない理由は単純です。Watsonは、英語は読めるのですが、日本語は読めません。日本の医療の現場に海外のAI企業が手を出せないのは、それが理由です」

高久史麿(公益社団法人地域医療振興協会会長):「医療の現場では超過勤務が問題になっていますが、医師の超過勤務が制限されたら病院が成り立たないという意見もあります。AIをうまく使うことで、医師が勤務時間内に仕事を終えられるようになるのではないかと考えます。そのとき、費用の問題はカバーできるでしょうか」

井元:「単一の病院から我々に依頼があり、それを受託してAIを開発したという場合は、それなりの額の費用が発生してしまいます。病院の人件費を削減できたとしても、その開発費をまかなえるのか、費用対効果はどうなのか、という話になります。我々は多くの病院を広くカバーするために、医療分野のジョイントベンチャーを立ち上げました。基礎的な開発はそちらで行い、病院は我々のサービスに接続してデータを開示していただくことで、働き方に関するアシストを受けることができる、というシステムを作ることができます。この形であれば、病院にとって負担にならない金額に抑えられると考えています」

源真里(一般社団法人東洋運勢学会会長):「人間がいろいろなことをしようとすると、しがらみがあります。忖度が必要な部分もたくさんあると思いますが、AIに忖度はできるのでしょうか」

井元:「忖度をシステムに取り込む必要があるなら、できるようにはなるでしょう。なぜなら、人間がどのように忖度しているかは、過去データに現れるはずですから、それが必要なのであれば、開発者がそれを行うように設計に入れ込むことは可能です」



鈴木昭(一般財団法人医療情報推進機構 理事長):「問診などでAIが導入される時代になった場合、病院はどのような人材を採用するとよいのでしょうか」

井元:「自社でAIシステムの運用を行うのであれば、特殊な能力が必要かもしれません。しかし、例えば問診を自動的に行うAIができ、それを導入するという場合、AIの運用に関しては運用会社に任せ、病院がそういった特殊な技術者を抱えなくてもよいという形になるでしょう。自社でAIを開発しようという場合には、AI開発のエキスパートが必要になります」

 

齊藤淳(ジョンズホプキンス大学 精神医学リサーチアソシエイト):「強いAIは個人を理解していくという話がありましたが、データ解析を依頼した人物をAIが理解していき、この人であればこのデータをもらうとこう判断するだろうというのを予測して、データの一部を出さないとか、そういうことをするようになる可能性はありますか。また、新たな法整備が必要になると思いますが、進んでいるのですか」

井元:「開発者がそういう機能を入れるかどうかという倫理観の問題です。AIは知的なシステムですが、それを知性と勘違いし、そこに意思が生まれるのではないか、と考えてしまうことがよくあります。しかし、これはシステムであって、現在のコンピュータシステムを使っている限り、意思が生まれることは100%ありません。嘘をつくような感性をシステムに取り入れることは可能ですが、入れるかどうかは開発者に意思によります。開発者の意思に反し、知性的に進化してしまうということはあり得ません。新たな法整備に関しては、あまり進んでいません」

猪俣武範(順天堂大学医学部附属眼科教室 医学博士):「AIが医療に導入されていく中で、医者がAIを使いながら医療を進めるハイブリッドの時代がくると思っています。そういう場合、法的責任はどこに置かれることになるのか、ということが重要になるでしょう。今後、AIの技術がアップデートされるときに、データサイエンティストやエンジニアの人が不可欠になるわけですが、そういった人もある程度医療に詳しくないと、ついていけないのではないかと思いますが」

井元:「法的責任については法整備がなされていないので、開発する側は、最終的には人間が判断すべき、という形になるシステムを設計せざるを得ません。ハイブリッドで手術する場合でも、法律上は人間が執刀しなければなりません。最終的にどこをどう切るかは、医師の判断にゆだねられるという設計にしなければならないのです。ただし、開発者は医学や医療のスペシャリストではないので、現場の人たちの声が重要になってきます。AI開発者ももっと現場に出るべきだ、と我々は考えています。AIのアップデートに関しては、データから自分で追加学習していくので、常時アップデートし続けるという形になります。その場合、医学の専門家と議論するという形になると思います」

服部智任(社会医療法人JMA海老名爽合病院 院長):「汎用型AIができると、労働力は少なくてすむという印象を受けました。急性期病院は人を多く採用して運用していますが、かなりの部分で人は不要になるのでしょうか。産業革命で家内工業から工場での生産に変わったときは、経済が成長していたので、他のところに労働力を回せたと思いますが、現在の日本だと、どういうことになるのでしょうか」

井元:「我々は歯科技工士の代わりに歯をデザインするAIを開発しました。しかし、歯科技工士がいなくても良くなったのかというと、そうではありません。CADシステムを使う仕事が簡略化されただけなのです。現在は、歯科技工士はある場所に詰めていて、歯科医院からきたデータを受けて、歯を作っています。しかし、このシステムがあると、歯科医院に歯科技工士を抱えることが可能になります。データを上げるとすぐに歯ができるので、それを微調整してくれる歯科技工士がいれば、歯科医院の中だけで完結します。こうして、歯科技工士の働く場所は増えるのではないか、とも考えています。結局のところ、仕事は減らない、奪われないと思います。逆に人間が活動できる範囲が増えるので、世の中の産業はもっと豊かになると考えています」

長堀薫(横須賀共済病院 病院長):「AIがCT画像診断のようなパターン認識が得意だとしたら、皮膚科の診断や病理診断にも応用可能ではないかと思います。その場合、放射線科の医師や病理の医師は、AIで置換可能と考えてよいのですか」

井元:「皮膚科の診断や病理診断にAIを利用することは可能です。症例データがあれば、我々にも開発できると考えています。ただ、置換できるということにはなりません。診断に自信が持てないときに他の医師とディスカッションしたりすると思いますが、そのディスカッションの相手がAIになるということです。そのため、放射線科医や病理医が診断できる症例数が飛躍的にアップする、という変化が起こるのだと考えてください」

片田直久(フリー編集者):「シンプルな診断はAIが出来るようになるが、ナースの仕事は対人的なスキルが必要なので、AIにはなかなか出来ない、という話を聞いたことがあります。本当ですか」

井元:「ある意味では当たっています。それは、ナースの仕事をAIがこなせないということではありません。例えば、ナースが病室に来たことで心理的に安心する、といったことを提供するのが、現在のAIでは不可能だからです。そういう意味では、人間と同じように動いて不気味でないロボットが出来ないと、ナースの仕事をすべて置き換えるは無理でしょう」

 

名和利男(サイバーディフェンス研究所 専務理事・上級分析官):「私が専門とするサイバーセキュリティの分野では、アメリカにおいて、サイバー防御にAIの活用が始まっています。現在は人間が攻撃を行っていますが、攻撃にAIが使われますと、人間では太刀打ち出来ないような気がします。そうした場合、立ち向かう方もAIを使うということになるのかと思っています。そういった未来像、AI対AIのような戦いとして、どのような姿が考えられますか」

井元:「攻撃側が人間で、防御側がAIだったとしても、防御側がものすごく不利な状況になります。攻撃側はなんでも手段をとることが出来ますし、それを進化させることも出来るからです。しかし、特徴やパターンは、膨大なログの状態から、人間が把握出来ないものでも、AIなら特徴を見つけることが出来ると思います。AIがアシストしながら、防御側の人間の手を借りて、やっていくことは出来るのではないかと思います。それは、現在の技術でも可能だと思います。攻撃側の技術をAIに学ばせることが出来るかと言えば、それに関しては未知数です。人間がやっていることなので、AIにも可能かもしれませんが。ただ、未知の攻撃方法をAIが発想するというところに至るまでには、AIの技術がもう少し進化する必要があるのではないかと思います」

山口和之(参議院議員):「医師の偏在、医師不足という問題があり、医師がいないところをカバーする技術が求められています。テレビカメラがあり、看護師がそこにいれば、AIを使うことで何とかなるのかもしれませんが、この問題について、何か考えていることはありますか」

井元:「予防医学の延長線上に、医師の偏在の解消ということも見えてくるのではないかと思います。AIが診断を出来るのであれば、医師がいない場所でも、看護師が1人いて情報を引き出すことが出来れば、あとはAIシステムで診断することが出来ます。働き方改革で病院にAIが入るようになれば、医師本来の仕事をする時間が長くなり、空き時間が増えてくるはずです。そういった医師の空き時間をAIがマッチングして、僻地の患者さんに対するAIの診断が正しいかを医師が判断するようにすると、僻地の医療行為を都市と同じ頻度で行うことが可能になります。そういうシステムを作れるのではないかと考えています」

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