日本の医療と医薬品等の未来を考える会

第24回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

第24回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

第24回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」を開催いたしました。
2018年5月23日(水)、17:00~18:30、衆議院第二議員会館の多目的会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第24回勉強会を開催いたしました。

詳細は、月刊誌『集中』2018年7月号にて、事後報告記事を掲載いたします。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。
「厚生労働省が平成20~21年頃にチーム医療を推進すると言ってから、10年近くたちますが、チーム医療がうまくいっているという話は聞こえてきません。さまざまな職種の方々が高い専門性を発揮するには、情報の共有と業務の分担が必要だといいます。どうすればチーム医療を推進できるのか、お話をうかがいたいと思います」

続いて、当会国会議員団会長の原田義昭・衆議院議員からご挨拶いただきました。
「現在、働き方改革の議論が進んでいます。一定の範囲を超えた超過勤務は問題があるわけですが、この議論で最も難しいのが医師です。医師も人ですから、健康管理に気をつけてもらわなければなりませんが、場合によっては深夜でも休んでいられないのが医師です。そこでチーム医療が求められているのだと思います」

今回の講演は、厚生労働省医政局医事課医師養成等企画調整室室長の堀岡伸彦氏による『いま、あらためてチーム医療を考える~行政の立場から~』と題するものでした。以下はその要約です。

『いま、あらためてチーム医療を考える~行政の立場から~』
講師:厚生労働省医政局医事課 医師養成等企画調整室
   室長 医学博士 堀岡 伸彦氏

■現行の時間外労働規制の概要等

 チーム医療を語るには、医師の働き方がいかに深刻であるかを説明する必要があります。現行の労働時間法制では、1週間に40時間を超えて労働させてはならない、という原則があります。ただし、36協定を結ぶと、それ以上働かせることができるようになります。36協定には、1ヵ月45時間は残業をさせてもよいというのが6ヵ月間続き、それを超えると上限なしになります。これが現行です。これを変えるために、「働き方改革実現会議」で議論してきました。医師については、時間外労働規制の対象とはするが、応召義務などの特殊性があることを踏まえ、5年間猶予することになっています。

■医師の働き方の実態

 医師の労働の実態を調査しました。日本の医師30万人中、10万人を対象にした調査で、かつてない詳細なデータとなっています。

 他の職種に比べてどうなのかを調べたところ、週60時間以上働いている人の割合は、医師が41.8%で断トツの1位でした。2位以下は調査のたびに入れ替わりますが、医師は不動の1位です。

 男女別で見ると、男性の労働時間が長く、週60時間以上の人は、男性で41%、女性で28%でした。週80時間以上だと、男性で11%、女性で7%です。

 診療科による違いがあり、勤務時間が最長なのは救急科で63時間54分、それに続くのは、外科系の59時間28分、産婦人科の59時間22分などです。最も短いのは精神科で、それでも50時間45分でした。週60時間以上働く医師の割合が最も高いのは産婦人科で53.3%、半分以上の医師が週60時間以上働いているという結果でした。

 日本では女性医師が増えつつあります。医学生は35%が女性なので、今後、女性医師はもっと増えてきます。現在、診療科によって、女性医師の割合は大きく異なっています。たとえば、皮膚科は46.1%が女性、眼科は37.9%が女性です。女性医師は労働時間が長い診療科に行かない傾向があります。産婦人科は33.7%で例外ですが、外科は7.8%、整形外科は4.6%です。外科の女性医師の割合は、乳腺外科を除くと整形外科以下になります。

 女性医師の労働時間は、子供がいる場合は短いのですが、子供がいなければ男性医師とほとんど同じです。子供がいても、40代、50代になると、男性医師とあまり変わらなくなります。男性医師は、子供がいてもいなくてもあまり変わりません。

■タスクシフティングの状況

 病院の種別により、医師の労働時間には差があります。大学病院は労働時間が長く、週63時間です。内訳を見ると、診療時間は長くないのですが、診療時間外の時間が長くなっています。研究や教育を行っているから当然で、待機時間も長くなっています。

 病院の種別による医師の業務負担に関する調査があります。一般病院が中心の四団体病院協議会と、大学病院中心の全国医学部長病院長会議で、まったく同じ項目で調査してもらった結果です。

 看護師への業務移管は、大学病院ではあまり進んでいません。大学病院は労働時間が長いので、タスクシフトを進め、チーム医療を推進することが必要なのですが、進んでいない実態が明らかになっています。たとえば、「点滴の実施」が原則実施となっているのは、一般病院では84.0%ですが、大学病院では63.0%です。「尿道カテーテルの留置」を原則実施としているのは、一般病院では72.1%ですが、大学病院では56.2%です。看護師への業務移管は、一般病院より大学病院のほうが進んでいないことがわかります。

 ただ、診断書や民間保険会社からの診断書の代筆や代行入力は、大学病院のほうが進んでいます。こういった代筆や代行入力を原則実施としている病院が、大学病院では6~7割程度ありますが、一般病院では3~4割程度に止まっています。事務に関しては、大学病院のほうがタスクシフトが進んでいます。

■チーム医療の推進に係る最近の議論

 チーム医療がどのように推進されてきたのか、歴史を紹介します。平成25年の「社会保障制度改革国民会議報告書」に、「医師不足と言われる一方で、この問題は必ずしも医師数の問題だけではなく、医師でなければ担えない業務以外の仕事も、医師が担っているために医師不足が深刻化している側面がある。その観点から、医師の業務と看護業務の見直しは、早急に行うべきである」と書かれています。それを踏まえて、「チーム医療の推進に係る検討会」ができ、その中で、チーム医療推進のためには、どのような制度を見直せばよいのか、という議論をしていただいています。

 チーム医療の基本的な考え方は、「多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつ互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」となっています。そして、これを実現させるために、看護師の役割の拡大が必要で、特定看護師を作ることになりました。特定行為に係る看護師の研修制度を創設し、医師の包括的な指示によって特定行為を行える制度を作ったのです。

 その他に、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士、薬剤師の業務範囲の見直しなども行われています。診療放射線技師は、造影剤の血管内投与に関する業務や、下部消化管検査におけるカテーテル挿入と造影剤の注入などができるようになりました。臨床検査技師は、インフルエンザ検査のための鼻腔拭い液の採取などができるようになっています。歯科衛生士は、歯科医師の指導のもと、直接指導がなくてもフッ化物塗布を行うことができます。

 特定行為に係る看護師については、医師が手順書で包括的に指示をしておき、研修を修了した看護師はある程度自分で判断し、その指示書の枠内であれば、特定行為を実施できるようになっています。こうしたことを行うために、長時間の研修制度を作り上げました。特定行為には、気管カニューレの交換なども含まれますし、ドレーンの抜去、インスリン投与量の調整なども含まれています。

 特定研修を行う指定研修期間は非常に限られており、現在のところ、34都道府県に69機関しかありません。今年度中に全都道府県で受けられるようにします。研修を受けた看護師は、現在738人ですが、最終的には全国に10万人の特定看護師を作ることを目標としています。

■医師の働き方改革に関する検討会

来年3月まで議論が続く「医師の働き方改革に関する検討会」の中間論点整理が出ています。その中で、チーム医療にとって重要なものとして、新たな職種が必要ではないのか、という論点も出されています。特に病院団体、外科学会、心臓血管外科などから、かなり強いご意見をいただいています。従来の看護を超えた職種であるPA(Physicians Assistant=医師助手)やNP(Nurse Practitioner)といた職種を創設すべきではないか、という強いご意見もいただいています。

 アメリカでPAが導入されたのは、かつて研修医が長時間働かされていたのですが、睡眠不足から医療事故を続発したのがきっかけでした。医療安全の観点から、週80時間の労働時間制限を作り、それによってこれまで研修医がやってきたことを行うため、PAの役割を拡大することになったのです。今、アメリカには10万人のPAがいます。日本も医師がこれまでのように働けなくなることで、チーム医療を推進できるのではないかと思っています。

 厚生労働省は、医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組みも打ち出しています。たとえば、チーム医療に関しては、点滴や診断書の入力などは、原則医師以外の職種が分担して実施し、医師の負担を軽減する必要があります。また、患者の家族への説明などは、緊急でなければ勤務時間外に行わない、ということもぜひ実施していただきたいと思っています。患者の家族が夜9時でないと時間がとれない、といったことがよくあります。これについては、国民に理解を求めていく必要があり、厚生労働省としてもキャンペーンを行う予定です。

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