日本の医療と医薬品等の未来を考える会

第25回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

第25回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

2018年6月27日(水)、17:00~18:30、衆議院第一議員会館の国際会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第25回勉強会を開催いたしました。
詳細は、月刊誌『集中』2018年8月号にて、事後報告記事を掲載いたします。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。
「仮想通貨、あるいは暗号通貨という言葉は、経済界では熟知されてきていますが、医療界ではまだまだ浸透していないと思います。しかし、医療機関の資金調達は、近い将来、仮想通貨も検討されるだろうと考え、このテーマで勉強会を開くことにしました」

続いて、当会国会議員団会長の原田義昭・衆議院議員からご挨拶いただきました。
「仮想通貨は最近非常に注目を集めています。ただ、非常に複雑な内容を含んでいまして、これからどのように進んでいくのか気になるところです。現状では、実行する方が先に進んでいまして、それを行政がどうハンドリングしていくのか、という状況になっています。ボーダレスの国際金融ですから、日本だけの問題ではなく、世界ではもっと進んでいるようです。日本としても、これを健全に育てていこう、ということだと思います」

続いて、当会国会議員団の三ツ林裕巳・衆議院議員からご挨拶いただきました。
「当会ではいつも勉強させていただいています。今回のテーマは仮想通貨です。医療の問題はともかく、仮想通貨のような話は専門外ですから、このような機会を作っていただけたことをとても感謝しています」

今回の講演は、金融庁総務企画局企画課信用制度企画室長の廣川斉氏による、ブロックチェーン技術や仮想通貨(暗号資産)、ICO(Initial Coin Offering)の概要の説明でした。以下はその要約です。

講師・廣川斉氏 本日はブロックチェーン技術や仮想通貨(暗号資産)、ICO(Initial Coin Offering)の概要についてご説明します。やや専門的な分野ですが、皆さまにご理解いただきやすい説明とするよう、できるかぎり努力したいと思います。このため、特に技術面に関する説明の一部は、必ずしも厳密ではない点について、ご容赦いただければと思います。

■ネットワークにおける記録の管理とブロックチェーン技術

 仮想通貨は、暗号資産あるいは暗号通貨と呼ばれることもあります。これらは、インターネットなどのネットワーク上でやりとりされる電子データです。仮想通貨(暗号資産)についてご説明する前に、ネットワーク上における記録管理について簡単にお話しします。

 ネットワークにおける記録管理の方法は、大きく分けて2つあります。いわゆる中央管理者が存在するものと、それが存在しないもの‐分散型‐です。

 従来は、中央管理者が存在するかたちの記録管理が一般的でした。つまり、まずは中央管理者を設置します。その中央管理者はきちんとしたサーバーを設置し、そこで皆さんの記録を一元的に管理します。もちろんバックアップもとります。また、セキュリティを確保し、悪意ある者が記録を改竄しようとするのであれば、それを阻止するのも中央管理者の役割です。中央管理者は、皆さんの記録を確実に管理するため、大きなコストを負担します。

 一方、分散型の記録管理は、特定の中央管理者を設置することはせず、ネットワークに参加する各コンピュータ端末が、それぞれ同じ記録を管理する方法です。こうすると、皆さんそれぞれが記録を持っている‐相互にバックアップしている‐ことになりますから、仮にどれか1つのコンピュータ端末が壊れても、記録が失われるようなことにはなりません。コストがかかる中央管理者は不要ということです。ただし、すべてのコンピュータ端末が中央管理者ほど厳重・厳格な記録管理をしているわけではありませんから、悪意ある者によって記録が改竄される危険性があります。

 ここでお示ししたのは一例ですが、申し上げたかったのは、分散型の記録管理には優れた面がある一方、課題も多くあるため、従来はあまり実用されていませんでした。こうした課題を乗り越えるために登場したのが、ブロックチェーン技術です。

 ブロックチェーン技術を用いた分散型の記録管理がどのように行われているかについて、仮想通貨(暗号資産)の取引を例にご説明します。まず、こうした記録管理では、1つ1つの取引をバラバラに記録するのではなく、複数の取引のかたまりをブロックとし、ブロック単位で記録していきます。ビットコインの場合、数百から数千の取引を1つのブロックにしています。次に、このブロックをチェーン状につないでいくのですが、新しいブロックをつなぐときには、ある特殊な計算を行うことにします。これは、前のブロックに含まれている記録を、暗号学的ハッシュ関数という特殊な関数を使って要約し、それを、新たに加えようとするブロックに記録するというものです。つまり、新たに加えられるブロックには、そのブロック自体の情報に加え、直前のブロックに関する情報も含まれることになります。このプロセスを、新しくブロックを追加するたびに行うことで、過去のブロックに関連する情報が、延々と次のブロックにも引き継がれていくのです。

 このような特徴を持つブロックチェーン技術を用いることにより、耐改竄性などの面における分散型の記録管理の課題を、実用上は解決することができたとされています。なお、ブロックチェーン技術は、もともとは仮想通貨(暗号資産)取引のために開発されたとされていますが、お気づきの通り、それ以外の分野でも幅広く利活用の可能性があります。現在、この技術を使ったさまざまな取組みが可能ではないかと、実験が進められています。

■仮想通貨(暗号資産)の概要

 仮想通貨(暗号資産)をめぐっては様々なプレイヤーが存在します。本日は代表的なプレイヤーをご紹介します。1つ目は、新たな仮想通貨(暗号資産)を考案・開発する者です。考案・開発者は、営利企業の場合もあります。2つ目は、仮想通貨(暗号資産)の取引記録を確定するための計算(マイニング)を行う者‐いわゆる「マイナー」‐です。3つ目は、ビジネスとして、仮想通貨(暗号資産)と法定通貨の交換等を行う「仮想通貨交換業者」です。仮想通貨交換業者は、ざっくりと申し上げますと、株取引における証券会社の機能の一部と証券取引所の機能の一部などを組み合わせた機能を担うプレイヤーです。

 仮想通貨(暗号資産)にはいろいろな種類があります。ビットコインについて申し上げれば、その時価総額は本年5月中旬には15兆円を上回っていました。参考までに申し上げれば、東京証券取引所に上場している株式で、最も時価総額が大きい企業は、トヨタ自動車で約23兆円です。ビットコインの取引を通貨別に見ると、日々変化はしますが、最近ではほぼ半分が日本円であるというデータもあります。なお、ビットコイン以外の他の仮想通貨(暗号資産)では、日本円による取引の割合は必ずしも高くはありません。

 では、どのような取引に仮想通貨(暗号資産)が使われているのでしょうか。ビットコインが最初に使われたのは、ピザ2枚との交換だったというエピソードが伝わっています。このように最初のうちは、支払手段として使用されることが想定されていました。しかし最近は、支払手段としてより、投資・投機の対象として、リターンを得るために使われるようになってきているとの指摘もあります。

■ICOの概要

 ICO(Initial Coin Offering)という言葉がよく使われるようになってきました。

 もともと金融の世界には、よく似たIPO(Initial Public Offering)という言葉があります。これは、企業が株式を発行して上場し、広く一般の投資家からお金を集めることです。少なくとも現在、ICOには確立した定義はありませんが、企業等がトークンと呼ばれる電子データを発行し、それを利用者が仮想通貨(暗号資産)などで購入することを指す、とされています。トークンの購入者は、トークンの購入を希望する他の者に対してトークンを売却(転売)することもできます。利用者間で売買されるようなトークン‐電子データ‐は、新しい仮想通貨(暗号資産)となります。

 トークンの種類は様々です。何の権利も付されていないもの‐ただの電子データに過ぎないもの‐も多いと言われていますが、特定の商品・サービスの購入に使えたり、購入にあたって割引を受ける権利のようなものが付いていたりするものもあります。近年、名古屋の飲食店が東京に移転するに当たり、移転費用の調達のためにICOを行ったという例がありました。そのICOで発行されたトークンは、東京の店がオープンしたらそこで使えるというものでした。

 ICOは新しい資金調達の手段として注目されてはいますが、現実には難しい課題も多く存在します。最近私が聞いた話では、グローバルにみれば、ICOを行ったプロジェクトの半分以上は失敗に終わっているとのことでした。

 金融庁には、金融関係の相談や苦情などの情報が集まってきます。また、消費者庁・国民生活センターとも連携しています。最近の相談や苦情には、ICOと称してお金を集める「詐欺」のような話も多いと聞きます。もちろん、すべてのICOが悪いというわけではありませんが、玉石混交の状況になっているようです。

 株式とICOで発行されるトークンの違いを1つだけあげておきましょう。株式は配当という形で企業の事業成果を受け取る権利があり、株主総会における議決権の行使という形で経営に参画する権利もあります。一部のトークンはそれに似た性質を持つようですが、何らの経済的な裏付け価値がなく、権利もないトークンも多いとされています。それでも人々がそうしたトークンを購入し、取引をするのは、トークンに対する値上がりの期待があるからです。金融庁としては、取引に参画するに当たっては、そういったことを十分に理解していただきたいと思っています。

 私見も入りますが、仮想通貨(暗号資産)やICOは、まだ発展途上の技術を用いたものであり、これからも、さらにいろいろな課題が見つかっていくのだと思います。こうした中で、利用者保護などもしっかりと行わなければなりません。金融庁は、利用者の皆さまに安心していただけるように、まずは仮想通貨(暗号資産)の交換等を行う業者について登録制としてきちんとした体制整備を求め、問題が認められた業者に対してはいろいろな処分も行っています。また、今年の4月からは、有識者を交えて新しく「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置し、制度的な対応のあり方のなど検討も始めています。現在はそのような状況です。


質疑応答では次のような発言がありました。

尾尻 「名古屋の飲食店の資金調達の話がありましたが、医療機関の資金調達にICOを行うことは可能でしょうか。たとえば、名古屋の医療法人が東京に進出にするため、その資金の20億円を暗号資産で集めたい。そこで、トークンを購入した人が東京の医療機関で治療を受けることができるようにする。そういうことが可能なのでしょうか」

廣川 「医療分野の規制に照らして可能か否かは分かりませんが、純粋に、病院がICOによって移転費用を調達すること自体は、可能であろうとは思います。飲食店だからできて、医療法人だからできない、ということはないということです。ただし、実際に行おうとした場合には、クリアしなければならない課題は多いと思います。たとえばトークンの購入者は、その名古屋の医療法人がいつ東京に進出し、いつ開業するのか、財務状況や事業の状況はどうなのかなど、知りたいことが多いでしょう。これが株式であれば、その発行会社は、法令に基づいて財務状況や事業の状況などを定期的に開示しなければなりません。ICOの場合には、そういう人たちに対し、どのようにして情報提供していくか、という課題があるのです。また、一定の場合には、金融商品取引法、資金決済法の規制がかかります。」

ケビン・クローン(越智研究所代表) 「仮想通貨を売買する人が、マイナンバーで登録するようにしたら、適正な取引ができるようになるのではないでしょうか。それについてはどう考えますか」

廣川 「マイナンバーという個人を特定できるIDのようなものが、何らかの形でブロックチェーンに記録されていれば、たとえばマネーロンダリングを防ぐといった観点からはプラスだと思います。一方で、プライバシーの保護の観点も必要だと思います。マイナンバー自体は保護の必要性が非常に高い情報なので、そういったものがブロックチェーンに記録されてインターネット上で誰でも観覧できる状態にされてしまうと、いろいろな問題が生じてきますから、そういった点についても考える必要があるでしょう」

中野哲平(株式会社NAM代表取締役) 「国で純正のブロックチェーンを作るといった動きはないのでしょうか。素晴らしい技術ですが、落とし穴もいっぱいあるようなので、国主導でやっていただければ安心できます」

廣川 「少なくとも現在、国が主導して技術者を集め、国自身がブロックチェーン技術の新規開発・改良を行っている例が世界にあるとは、聞いたことがありません。ただし、金融庁もそうですが、ブロックチェーン技術にどのような使い道があるか、という点を民間と協働しながら模索しているという例は多いと思います」

増田聡(一般社団法人日本情報技術協会理事長) 「これからマイニングに対して登録制を取るのでしょうか。また、証券仲介業を仮想通貨で考えていますか」

廣川 「少なくとも現在、マイニングをそこまで規制している当局が世界にあるとは、聞いたことがありません。なお、金融庁は、先般「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置したところであり、制度的な対応のあり方については、そこでのご議論も踏まえて検討していきたいと考えています。今の段階で決まっていることはありません」

水野泰輔(株式会社トランスティックアドバイザーズ代表取締役CEO) 「ブロックチェーンの技術は、今後の医療経営に活かせるでしょうか」

廣川 「例えば、複数の医療機関の間、あるいは医療機関と公的機関の間などでデータを共有するような場合に、ブロックチェーン技術を活かす余地があるのかもしれません。現在、金融の分野に限らず、ブロックチェーン技術の利活用に向けた実験がいくつも行われていますが、その多くは、ネットワーク上の不特定の者にアクセスを認めるタイプのデータベースではなく、限定された参加者のみにアクセスを認めるタイプのデータベースとしています。そうなると、そもそも、分散型の技術‐ブロックチェーン技術‐を使うのがいいのか、既存の中央管理が存在するかたちの技術でもいいのか、コストや安全性などの観点も踏まえつつ、考える必要があると思います」

井元剛(株式会社9DW代表取締役) 「金融庁として、技術について研究していることはありますか。もう1つ、ICOで資金を集めた場合、一部は仮想通貨の取引所に上場すると思いますが、発行主体の人たちが自分たちの仮想通貨を買い支え、価格をつり上げるといった操作ができてしまいます。そのような問題にはどうお考えですか」

廣川 「金融庁は、技術について直接研究するような能力は持ち合わせていません。もう1つの御質問については、非常に大事な課題だと考えています。金融のマーケットでは不適切な取引があってはいけないと言うのが、大切な考え方です。「仮想通貨交換業等に関する研究会」では、不適切な取引への対応も含め、今後もご議論いただこうと考えています」

Derek.Q(QEST-ETERNAL Group会長) 「今、中国でもICOはものすごく注目されています。ICOとIPOと社債の違いは何ですか」

廣川 「IPOで発行される株式と、社債については、会社法などの私法上の位置づけが明確で、発行時に、金融商品取引法の規制がかかります。他方、ICOについては私法上の位置付けが不明確ですし、その性質も様々です。ただし、ICOであっても、例えば、収益分配を行うようなものについては、金融商品取引法制、証券法制の規制に照らして、該当する場合には規制されることになります。それは日本でも、アメリカでも同じです。」


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