日本の医療と医薬品等の未来を考える会

第32回 「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

第32回 「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」リポート

2019年2月27日(水)、17:00~18:30、衆議院第一議員会館の国際会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第32回勉強会を開催しました。詳細は、月刊誌『集中』2019年4月号にて、事後報告記事を掲載します。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典が挨拶。

「医療費の増大が国の財政に影響を与え、国を亡ぼすと言われています。高齢化社会になり、医療機関や介護施設には高齢者が押し寄せています。医療費などの社会保障費が増大するのは当然ですが、そのツケを子や孫の代に丸投げするわけにはいきません。医療について、その費用について議論すべき時が来たのではないかと思います」

当会国会議員団会長の原田義昭・衆議院議員(環境大臣)からご挨拶を頂きました。

「10月には消費税が10%に上がります。消費税についてはいろいろな議論がありますが、政治の側からしますと、これをしっかり確保することによって、国民のすべてが安心できる社会保障を確固たるものにしていく必要があります。責任をもって、これを進めて行かなければと思っております」

当会国会議員団の三ツ林裕巳・衆議院議員からもご挨拶を頂きました。

「本日は財政面に関するご講演とのことです。少子高齢化が深刻さを増す時代において、社会保障を考える場合に最も肝心なのは財政です。しっかりした財政を背景に、安心できる社会保障を構築して行くことが大切であると考えています」

今回の講演は、財務省主計局主計官(厚生労働第一担当)の吉野維一郎氏による『社会保障と財政~持続可能な社会保障の構築に向けて~』と題するものでした。以下はその要約です。

 現在審議中の平成31年度(2019年度)予算では、社会保障費は約34兆円で、一般会計歳出総額の3分の1を超える規模となっています。34兆円の内訳を見ると、年金が約12兆円、医療が約12兆円でほぼ同額です。一般会計歳出の変遷を見ると、消費税が導入された1988年の社会保障費は10.4兆円で、30年後の2018年は33.0兆円でした。約3倍になっています。一方、国の債務残高はGDP比で220%に達しています。社会保障給付費総額は年々増えて121兆円に達していますが、中でも公費負担が増えています。国庫負担の約3分の1が、将来に影響を及ぼす赤字国債で賄われています。

 高齢者人口は2040年頃にピークを迎え、その後は減少傾向に入りますが、支える世代の減少は既に始まっており、今後もすごい勢いで減って行きます。現役世代(65歳未満)の医療費は平均18.4万円(国庫負担2.6万円)ですが、後期高齢者では平均91.0万円(国庫負担34.9万円)となっており、給付で約5倍、国庫負担で13倍掛かります。これが医療費に大きなインパクトを与えることになります。

 国民医療費は、2006年を100とすると2016年には127になっていて、どのような要因で伸びたのかを分析すると、約半分は高齢化が要因で、残りはその他の要因とされています。その他の中には、医療の高度化や高額化、診療報酬のプラス改定などが含まれています。また、これから社会保障費がどのように増えて行くかを推測した値もあります。2018年に比べて2040年には、年金が1.3倍、医療が1.7倍、介護が2.4倍になると推計されています。

 持続可能な社会保障のためには、給付と負担のバランスを考える必要があります。多くのOECD諸国と比較して、2015年の日本は負担の割に給付が多い状態です。このまま改革を行わないと、給付がさらに膨らんでいき、給付と負担のアンバランスが更に拡大して行きます。バランスのとれた状態に戻すためには、「給付を抑える」「負担を引き上げる」という2つのどちらか、あるいは両方が必要になります。

 国は社会保障と税の一体改革を進めて来ました。社会保障4経費に消費税を充てることにし、消費税を社会保障目的税化にするという改革でした。消費税率は今年10月に8%から10%に引き上げられますが、社会保障の充実と、後の世代への負担の先送り軽減等の社会保障の安定化のために使われます。消費税率の引き上げで実現する政策は、0歳から65歳以上まで、あらゆる世代に届く全世代型社会保障になっています。そのためにも、全世代型の負担が必要ですが、現在はまだそのようにはなっていません。

 今後の社会保障について考える必要があります。社会保障費の増加は、高齢化による増加とその他の要因による増加に分けられます。このうち高齢化による増加は避けられないとして、その他の増加を圧縮していく必要があります。そういった目標で2019年、20年、21年の予算を組むことが閣議決定されています。

 今後の社会保障改革を考える場合、国民皆保険を維持し、制度の持続可能性を確保して行くために、「3つの視点」が必要と考えています。

1つめは「保険給付範囲のあり方の見直し」です。新たな高額な医薬品のすべてを公的保険の対象とするのか、という議論は必要でしょう。あるいは、湿布、ビタミン剤、漢方薬などについてはどうか、諸外国の例なども参考にしながら考えるべきではないかと思います。

2つめは「保険給付の効率的な提供」です。これは医療提供体制の話です。2025年の病床必要量は119万床。急性期病床を減らし、急性期、回復期、慢性期、在宅に振り分けられるという流れになっています。病床管理をしっかり行う必要があり、そのためのインセンティブがつく制度も導入します。

3つめは「給付と負担の適切なバランス」です。持続可能性確保のためにも、後期高齢者の窓口負担の在り方を検討していく必要があります。また、現在は年金等の所得に応じて負担割合が決まりますが、預金などの資産を持つ方もいるので、資産を考慮して負担を求める仕組みが必要でしょう。それを実現させるためには、マイナンバーの普及が不可欠であると考えています。

講演後の質疑応答では、活発な意見交換が行われました。


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