日本の医療の未来を考える会

第34回「日本の医療の未来を考える会」リポート

第34回「日本の医療の未来を考える会」リポート

画像認識能力でAIは人間を超えた

 AIというのは人間の知能をコンピュータ上に再現したものです。第4次産業革命とも呼ばれている人工知能革命は、①ディープラーニング②高性能GPU(処理能力の速いコンピュータ)③ビッグデータという3つの技術が可能にしています。

 ディープラーニングについてごく簡単に説明しておきます。コンピュータに「猫」を覚えさせようとする時、従来は定義やアルゴリズムを入力して特徴を教え込みました。「耳が2つ」とか「ひげがある」といったことを教え込む必要があったのです。

 しかし、ディープラーニングでは、定義などを教え込む必要はありません。たくさんの猫の画像を与えるだけで、猫の特徴をコンピュータが自分で学んでいくのです。

 画像を認識する能力を競うコンテストを行うと、人間は平均して5%ほど間違えるのですが、従来のコンピュータは25%くらい間違えていました。

 ところが、ディープラーニングという仕組みを使って覚えさせると、間違える率が15%程度まで下がったのです。ディープラーニングのニューラルネットワークの層を増やすと、精度は更に向上し、間違える率が2〜3%になりました。つまり、画像認識能力でついに人間を超えたのですが、これが2015年のことでした。

 ただ、AIが人間を上回ったのは、あくまで画像認識能力だけです。

6㎜以上の胃がんを98%の精度で発見

 AIの画像認識能力を活用することで、いろいろなことができます。私どもは消化器内視鏡AIで、世界初の研究成果を挙げることに成功しました。これなら実用化できるのではないかと考え、2017年に会社を設立したのです。

 私どもの研究の特記すべき点は、68施設から大量のデータをいただいていることです。高精度の動画を収集しており、既に数万本の高画質データが集まっています。

 現在は、内視鏡診断AIのプロトタイプをどんどん改良しており、今年中には治験を開始し、2〜3年後には薬事承認を得て、事業化を目指しています。

 胃がんの診断では、6㎜以上のがんであれば、98%の精度で発見することができます。また、1画像の診断にかかる時間は0.02秒です。この速さで診断するので、内視鏡を入れている時に、リアルタイムで使用することができます。画面のがんが疑われるところにマークを出し、がんである確率を表示します。ここをよく見なさいと、AIがアシストしてくれるのです。

 内視鏡診断AIは、17インチのノート型パソコンの中に入っています。内視鏡に接続するのは非常に簡単で、1本の映像ケーブルを繋ぐだけです。設置に5分もかかりません。胃がんだけでなく、食道がん、十二指腸腫瘍、大腸がん、咽頭がんなどもカバーするAIとして開発を進めています。

 この内視鏡診断AIは、世界初の技術を搭載しています。しかし、薬事審査を経なければ、実用化することができません。審査というハードルで、世界初の技術が潰れてしまうのは、あまりにもったいないと考えています。

 このAIは、あくまで診断の支援ツールです。本当に治験が必要なのでしょうか。臨床評価については、治験ではなく、撮影済み動画で十分に担保できます。本当に治験が必要なのだろうか、ということも考えてみる必要があるでしょう。せっかくの技術が、薬事審査というハードルに阻まれ、世の中に出て行けなくなることは、なんとしても避けたいと思っています。

 内視鏡診断支援AIは、誰にとってもウィンウィンの製品です。患者さんは高精度の検査を受けられますし、追加の負担は全くありません。医師にとっても、AIのアシストを得られるので、検査の負荷を減らすことができます。医療機関にとっても、最先端のシステムを導入することで、業務の効率化とリスクの低減が可能になります。

 より良い内視鏡医療の実現に向け、これからも頑張ってまいります。

質疑応答

尾尻「薬事審査に2〜3年もかかるのはもったいないと思いますが」

多田「AIはバージョンアップが早いので、さすがに3年もたってしまうと、5世代から6世代前のものになってしまいます。これはさすがにきついな、というのが正直な気持ちです」

加納宣康・沖縄徳洲会千葉徳洲会病院名誉院長「昔は多田先生も早期胃がん研究会などで、たくさんの画像を見ながら議論していたのだろうと思います。そういう先輩達が蓄積した画像診断の技術をAIが学習し、診断の支援をしてくれる。これからは簡単に診断できる時代になるんだな、ということが分かりました。しかし、昔の内視鏡専門医が行っていたような勉強を、これからの人達はしなくても良くなるのでしょうか。多田先生も、かつては研究会で絞られて成長したのだと思います。これからもそういう教育の機会は必要だと思いますが、どうでしょうか」

多田「将棋の藤井聡太七段が、なぜあんなに早く強くなったかというと、AIとの対局を繰り返して特訓したからだといわれています。内視鏡診断AIは、多くの内視鏡専門医の叡智を集めたものですから、やはり教育に役立つのではないかと期待しています。内視鏡検査を行っている時、常にマンツーマンで、『ここをよく見なさい』『これが早期胃がんですよ』と教えてくれるようなものです。そういう意味で、内視鏡診断AIは教育用のツールにもなるのではないかと思っています。今までは内視鏡医が一人前になるまでには、10年1万症例の経験が必要といわれていました。内視鏡診断AIを使うことで、もう少し教育期間を短縮することが可能ではないかと考えています」

関川浩司・石心会第二川崎幸クリニック院長「薬事審査には、静止画と動画の両方を出そうとしているのでしょうか。私は、最終的には動画で、リアルタイムでAIを活用すべきだと思っています。ただ、検診のお話などを聞くと、膨大な静止画の診断支援も必要で、両方やらなければならないのかもしれませんが。また、私は外科医で、大腸や胃の手術を行っているのですが、手術の切除範囲診断は、人間の目で行うよりも、将来的にはAIの方が正確になるとお考えですか」

多田「薬事審査についてですが、静止画と動画の両方で申請するのはあまりにも大変そうなので、動画だけで申請します。全世界の検査室ですぐに使ってもらえる可能性があるということで、まず動画で申請し、静止画はその次ということになります。手術における切除範囲診断については、実は次世代内視鏡AIとして、現在のバージョンアップ版として出したいと考えています。現在、既にその開発に着手しています」

関川「この内視鏡診断AIは、どのくらいの価格で一般に販売されることになるのでしょうか」

多田「私どもはベンチャーですから、某大手メーカーのように数千万円という価格を付けることはしません。広く多くの方に使ってもらえるようにしたいと考えています」

荏原太・すこやか高田中央病院院長「この内視鏡診断AIの内容を5Gでクラウド化して、同時進行でチェックできるといいなと、個人的には思いました。もう1つのお願いは、これをぜひモダリティフリーで出していただきたいということです」

多田「5Gについては、重々承知しているのですが、実は院内の通信スピードが整っていない施設が多いのです。それから、現在の4Gではリアルタイムで途切れたりするとまずいので、最初に出すのはスタンダードバージョンで、繋がっていなくても、単独で動くものを出します。しかし、5Gの対応、クラウド化については、当然、準備を進めています。また、どのメーカーの内視鏡とも繋げるような形で開発を進めています。


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